メンタルヘルス対策と復職支援リワークの活用

 自分や家族、部下が、うつ病かもしれないと気づいたとき、あるいは、うつ病であると診断されたとき、多くの方は「まさかそんなはずは…。これからどうしていったらいいのか…」と、呆然とすることでしょう。
 現代では、「メンタル不全による休職」が急増しており、社会的に無視できない程の勢いになっております。
 うつ病などの「メンタル不全」は、決して特別な病気でもありません。ましてや、本人の「やる気がない」とか、「性格」のせいでもないのです。子供からお年寄りまで、年齢を問わず発症する可能性があります。
 今や、日本では、一生のうちにうつ病にかかってしまう確率は、6~7人に一人とされています。また、現時点で、100人いれば、そのうちの2~3人は現時点でうつ病を抱えているといいます。さらに、「メンタル不調」うつ病の予備軍は5割以上という統計も出ています。
 つまり、誰もがかかりうる病気であり、現在抱えながらも自覚していない病気なのです。

 また、メンタルヘルスの問題で休む場合、長期にわたることがあります。1回に3ヶ月以上、長くて1年、復職後うまく馴染めず、再び休職を何度も繰り返す人も多いです。そうなると、休みを繰り返すうちに、仕事をする自信がなくなって辞めてしまったり、職場に居づらくなってしまったりします。なかには生きる希望を失い、自殺する人もいます。
 多くの人が、日常生活に支障が出てしまう深刻な状態になるまで、自分の状態が良くないことに気づきません。なぜ気づくことができないのかというと、「自分の仕事の能力がないせいだ」「自分のがんばりが足りないせいだ」と思いこんでいるからです。周りの人も、本人がかろうじて仕事や家事などをこなすことができるし、必死に不調を隠そうとするので、全く気付かないことも多いです。
 このように、追い込まれてしまう人というのは、「仕事がすき」「責任感・義務感・使命感」が強い人、前向きで、建設的にあれも自分でやろうとする、企業にとって有用な人材であることが多いです。そういう人こそ、仕事をやりすぎて疲れ果て、燃え尽きていく、あるいは、「うつ病」等のメンタルな問題が深刻化してしまう傾向にあります。

 そのように深刻化してしまう前に、「本人」「家族」「企業」はどのようにサポート体制を組んでいったらよいでしょうか。そして、深刻化してしまったとき、どのように「生き生きと働くことができる力」を再生することができるでしょうか。

 的確な治療の支援とサポートをするためには、まずは「メンタルヘルス」に関する知識について、「本人・家庭・企業」それぞれが、しっかりと学ぶことから始まります。
 誤った知識と思い込みで、誤った「声がけ」「支援」を行ってしまえば、「うつ病」が深刻化し、衝動的な自殺にも結びつきかねない、大変繊細な病気であることを心しておく必要があります。どんな一言が引き金になってしまうかわからないのです。ですから、まずは、正しい専門知識が必要です。
 といっても、医師程の知識が必要であるわけではありません。
 「どんな病状のサインがあるのか」「家庭・企業・本人」が具体的にどのようなことをすればよいかについての実践的で、具体的な知識と、本人の辛さをイメージできる知識を得ることが必要です。いざという時に、誰に、どこに相談したらいいか。それらについて学んでおきましょう。
 
 第1に、「早期発見・早期治療」をすること。
 第2に、休業中の、「本人」「家族」「専門医」「企業」がそれぞれの役割をきっちりと果たし、効果的な治療を助ける支援と、連携して長期にわたりバックアップする。
 第3に、復職のための「リワーク・プログラム」を行う体制を整えること。
 これらのことが必要になってきます。

①  「早期発見・早期治療」のために

▼「メンタルヘルスの基本」…本人・家庭・企業それぞれの気づきと対策

 うつ病など「メンタル不全」になると、様々な病気を示す症状があらわれてきます。
 「セルフチェック」の項目で、自分でうつ病の兆候に気づくことができるようになります。また、本人よりも家族や上司から見たほうが早期発見になる場合があります。ですから、家族や上司も、「メンタル不全のチェック項目」に関して覚えておくことで、「早期発見・早期治療」につなげることができます。
 うつ病のサインを決して見逃さないようにすることが、病状を深刻化しないために最も効果的なのです。

▼ 「精神・心の病」…うつ病・アスペルガー障害・摂食障害・睡眠障害について

「うつ病」は、睡眠の不調とも関連が深く、また発達障害ゆえの不調という場合もあります。精神病について、「ひょっとして…」と気づくきっかけを作ることができるように、漠然としたイメージでもいいので知っておきましょう。それによって、メンタル不調の早期発見をすることができます。

▼ 「職場での予防対策」
  セルフケア・ラインケア・効果的な内部EAP・外部EAPの利用
 
 企業が積極的に労働者の「メンタルヘルス」、「カウンセリング」、「休業者の復職支援」に関して専門医と連携を取り、積極的に「メンタル不全」について、対策を講じる必要性が高まっています。
 なぜならば、メンタル不全になってしまった人、メンタル不全の予備軍を合わせると、労働者の実に5割が何らかのメンタル不調を抱えながら勤務しているという実態があるからです。
 また、「メンタル不全」になり、休職、復職するもすぐに不調になりまた休職…。それを繰り返しているうちに、突然自殺に至る…。そのような深刻な状態にまで陥ってしまう人が急増しています。「自殺」に至ってしまえば、本人、家族はもちろんのこと、企業もたいへんなリスク・ダメージを負ってしまうことになります。
 そのような状況に陥る前の「セルフケア」「ラインケア」「休職後のリワーク・プログラム」などについてしっかりと対策をねり、社としての方針を労働者に周知しておく必要があります。また、具体的な企業の医師との連携による専門的知識に基づいた体制の整備、社員自身の「セルフケア」などの研修教育、ストレスを減らす人的・物的環境整備が必要になります。
 今や、メンタル不全に対する問題に対して、「最もコストやリスクを追わない方法」は、「専門家の適切な指導のもと、職場の環境改善・セルフケア・ラインケア・リワーク・プログラムについて積極的に取り組み、万全の体制を組むこと」なのです。

② 休業中の、「本人」「家族」「専門医」「企業」がそれぞれの役割をきっちりと果たし、効果的な治療を助ける支援と、連携して長期にわたりバックアップする。

▼ うつ病の治療
 メンタル不全の大部分が「うつ病」のような症状から始まることが多いです。
 「うつ病の治療」に対して、「認知行動療法」についての学習と訓練が再発を防ぐためにかなり効果的になります。また、認知行動両方・病気に対する正しい知識を得ること自体が治療の効果を発揮します。予防・治療のためにも本人だけでなく、家族・上司も「認知行動療法」に関する知識を学んでいただきたいと思います。
 うつ病の症状と、治療、対策法についても記述してあります。

③ 復職のための「リワーク・プログラム」を行う体制を整えること。

▼ リワーク・プログラム …
 本人・家庭・企業が休職中と復職時にどのようなことに気をつけながら、どのような対策を熱必要があるのかについて記述しております。
<本人>
 休職中、復職前後、病気の回復状況によって、どのようなことに取り組んだらよいのかについて記述しておきました。ご本人は、家族のためにも一刻も早い復職をお望みのこととおもいます。回復してくると、気分が爽快な時間も長くなってきて、焦りが強くなってきます。ですが、回復して来て、復職する前後が最も「自殺の危険」が高まる時期でもあります。「日常生活がおくれる程度の回復」で復職すると、再発・再燃を招きます。できるだけ、専門職の指導のもとに、行政・医療・民間の「復職支援プログラム」に沿って、時間をかけて段階的に準備していく必要があります。
 焦りが強いうちは、復職しても失敗に終わる可能性が高いです。入念な時間と体験を通して準備を行うことにより、「医師・リワーク職員の正しい診断のもとに復職する」ことが最も「効果的で再発再燃を防ぐ近道」になります。

<家族>
 休職から復職するまでの間、ずっと「メンタル不全」を抱えた本人を支え続けなければならないのは、家族になります。「家族にしかできない支援」があります。
 病状が非常に悪い場合、回復期の自殺の可能性が高まる時期、病状を把握し、本人の辛さに寄り添い、冷静に判断しながらも暖かく見守っていかなければなりません。医師とともに本人の病状を把握し、薬についての副作用や、自殺の可能性が高まった時などの緊急時への備え、どのような対応をしていったらよいのか、環境整備はどうしたらいいか等について学んでいかなければなりません。
 長い休職期間の生活を支えるためにも「自立と就労のための社会資源の活用」を積極的にしましょう。
 支えになる家族も、大変つらい立場に立たされます。一人で支えようとせず、周りの人、専門医、行政の支援施設、経済的な支援制度等を上手に利用するために、あらゆる情報を集めましょう。
 地域の健康センターや、行政、医療機関が窓口となり、様々な情報を提供してくれるはずです。「家族会」などに参加し、力になってもらいましょう。
 治療が長期にわたる場合は、「社会的支援をより多く受けるために」、「精神障害者保健福祉手帳」の取得をおすすめします。様々な経済的支援(減免制度)・施設利用などのサービスを受けることができます。初診から6ヶ月以上経ったとき、利用について前向きに検討しましょう。

<企業>
 休職中から復職できるまでの回復を支えるのが家庭だとすると、「復職を成功させる」ための中核をにない、本人・家族・専門医・産業保険スタッフと連携をとり、リーダーシップを発揮しなければならないのは、企業です。
 復職を完全に成功させるためのポイントは、企業がいかに組織だてて、長期にわたる綿密な計画を立て、具体的な対策を練り、家族と本人のサポートができるかにかかっています。
 厚生労働省から「心の問題により休職した労働者の職場実機支援の手引き」のマニュアルをもとに、「職場復帰を完全にする」ための企業の入念な対策を練り、予め社員全員に周知徹底を測りましょう。
 労働者が休職期間を終了し、復職したい意思を伝えてきたとします。
 まずは、復職できるほどに回復しているのかどうかを「診断書」に書き入れてもらうわけです。大事なことは主治医に診断書を提出してもらう前に、患者の作業環境、復職可能になるために必要な能力について、主治医に伝えておき、それらの「就業に必要な具体的な業務が可能かどうかということについて診断」してもらうことが大切です。工事現場で作業する方と、営業を各地方に出張する方、クレーム処理の担当の方等、復職が可能と判断するための基準がそれぞれに異なってくるはずです。
 また、個々人の復職に必要な技能可能になるまで、「休職期間」について柔軟に捉えることも大切です。中途半端な回復ですと、復職直後にかかるストレスに耐えられず、すぐに再発・再燃になりかねないからです。 
 ですから、本人の労働力を活用する企業が中心となり、本人・家族・主治医・産業医・産業保険スタッフとの連携を取り、本人の病状を具体的な業務が可能かどうかについて考え、その人にあった「リワーク・プログラム」を作成することが、大変に重要になってきます。

 これらのことについて、記述しておきました。参考書籍やURLも載せておきましたので、ご参考にしていただければ幸いです。

 バブルは既に崩壊したにもかかわらず、「人材の切り捨て・使い捨て」の風潮は以前のままのようです。「うつ病」になってしまう前の労働者は、非常に勤勉で、優秀、そして誰かが困っていれば、自分が引き受けるような責任感ある方であったことと思います。
 メンタル不全に陥ってしまった人こそ、企業のために心血注いできた人材であったはずです。
 「人材の切り捨て・使い捨て」はやめましょう。何があっても、たとえメンタル不全に陥ったとしても、企業として全力でバックアップし、「貴重で優秀な労働力の復活」をサポートする。そのような「責任を尊ぶ企業」こそが、労働者から信頼を得て、決して貴重な労働力を消費しない、粘り強い企業に発展していくと思うのです。
 「一人はみんなのために、みんなは一人のために」。絆を大切にし、信頼し合い、実力を発揮できる職場づくりのためにも、「メンタルヘルス」に積極的に取り組む必要があるのです。
 
 明日を担うあなたのために、家族のために、企業のために、情報を掲載いたしました。お役立ていただけましたら幸いです。
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