うつ病の治療と対策法

☆ ☆ うつ病の治療と対策法 ☆ ☆

 うつ病の初期症状、家族ができる支援、ケアについては、当ブログの「◆精神・心の病―うつ病」と、「◆うつ病の治療―うつ病の症状とは(通院までのステップ)」でご紹介しました。

 では、実際に、家族が「うつ病」かもしれないとわかり、通院を考える状況になったとして、一緒に考えていきましょう。
 「うつ病」かもしれない。というだけで、本人にも家族にも、非常にショックなことです。
 アメリカでは、風邪や歯が痛かったとき、失恋したとき、「カウンセリングを受けるのが当たり前」という風土があります。実際に歯医者の数ほど、カウンセラーがいるそうです。これも、多民族、多宗教、多言語の社会の中でうまくコミュニケーションをとっていくための「自然の防衛策」なのかもしれません。「心の健康を保つ」という意識と理解が、アメリカの社会には根付いています。
 ところが、日本では、まだまだ「メンタルヘルス」についての理解が深くなく、「精神科」にかかるだけでも、非常に抵抗を感じるのが実際のところです。ましてや、上司に相談しようものなら、降格・査定・離職の危機を真っ先に考えてしまいます。現在の日本の経済状況、震災の影響、原発事故…。不安な社会情勢の中で、「心の弱さ」を表明してしまうことは、「危機」であります。
 ですが、今までご紹介してきたように、「うつ病」は「盲腸」「高血圧」「糖尿病」などと同じように、ほっておけばおくほど、悪化し、時には「衝動的な自殺」という、「死」につながる恐れのある病気でもあります。ですから、ご自分のためにも、家族のためにも、勇気を出して「治療への一歩」を踏み出さなければなりません。早期治療により復職支援プログラムなどを通して職場復帰をされた方も大勢います。
 ご本人にとって心理的にとてもつらい病気のうつ病ですが、うつ病の治療と対策法を理解し、焦らずゆっくりと治療を続け回復を目指しましょう。

◆まず保健センターなどの相談窓口を訪ねます

 家族や友人が、本人の異変に気づき、「本人にはまだ話せない」「でも、これからどうしたらいいかわからない」というときには、思い切って市区町村の「保健センター」や都道府県の「精神保健福祉センター」などの「公的な心のケア専門機関」に相談してみてください。
 家族が「うつ病ではないか」と気づき、「話を聞いてあげる」「できるケアをしてあげる」だけでは回復が見られず、悪化しているようであれば、「公的な心のケア専門機関」に相談してみましょう。本人に話したら、「これ以上追いつめてしまうのではないか」「いきなり病院に行こうと勧めていいものだろうか」と悩む場合、匿名で本人でなくても、家族や関係者でも相談することができます。
 内容によっては、そこで直接精神科医にも相談できる場合があります。

●公的機関は本人以外でも相談可能です
 心のケアについて相談可能な公的機関は、
☆ 各都道府県、政令指定都市に設置されている「精神保健福祉センター」
☆ 市区町村「保健センター」
 これらが住民に身近な窓口として、開かれています。
 本人でなくとも、家族や関係者が、「うつ病のようだが、どうしたらいいかわからない」といったときに匿名で相談できます。具体的にこれからどうしたらいいかということも教えてもらえます。
 「受診を迷っている」「治療を受けているが、経過が思わしくない」「今の病院でいいのか不安」「ほかの病院にかかることも可能か」といった悩みも匿名で相談できます。
 医療機関では、「本人が来ないと話にならない」となる場合もありますが、内容によっては、そのまま直接精神科医にも相談できます。

●「保健センター」
 心の健康に関する相談業務の窓口は、まず、市区町村の「保健センター」が担当します。
 「相談したいとき」は、まず、市区町村の「保健センター」へ行きます。
 ・ 家族の目からは病気ではないかと疑っているものの、本人が否定し病院にも、外に間全く出たがらない。そのまま数か月たってしまった。だれか専門の人に訪問してもらうことはできるだろうか
 このような場合でも、対応してくれる場合があります。ただし時間がかかる場合がありますので、その辺はよくご説明を受けてください。
 匿名で相談できますし、「守秘義務」と言って、職業上知りえた秘密を漏らしてはならないという義務がありますから、秘密が漏れることはありません。
 安心して相談してみてください。

●Webで相談する
「心の耳」厚生労働省
http://kokoro.mhlw.go.jp/hatarakukata/
「働く方へ」というタブをクリックすると、
☆「精神科心療内科へのご案内」→各都道府県の心療内科の案内があります。
 精神科や心療内科のある病院、診療所(クリニック)をご案内しています。
地域ごとに選択でき、診療日・診療時間なども挙げています。
☆都道府県精神保健センター一覧
 日本地図をクリックすると、その県の「精神保健福祉センター」の住所連絡先が乗っています。ですが、最初に市区町村の「健康センター」からの相談をおすすめします。
相談する順序があり、「健康センターから相談してください」と言われる可能性があります。
☆全国の保健所
 まず、県を選択してクリックすると、各市区町村の保健センターの連絡先が表示できます。電話番号や住所が書いてあります。そこで名称を確認し、ホームページを検索してからご相談に行くのもよいかもしれません。

☆働く人の悩みホットライン
 協会本部では、2004年9月1日から無料電話相談を通年で実施しています。この電話相談は本部に設置した「働く人の悩みホットライン」で、相談料金は無料です(通話料金は相談者負担となります)。相談は月曜日から土曜日までの午後3時から午後8時まで受付けています。相談内容は、職場、暮らし、家族、将来設計など、働くうえでのさまざまな悩みで、相談時間は一人1回30分以内です。
☆ 症状、相談したいことをメモして、明確にしてからご相談するとよいかもしれません。
 後で「初診で聞かれること」を項目にしておきます。

「働く人の悩みホットライン」の電話番号は 03-6667-7830です。
☆働く人の「こころの耳メール相談」

 働く方等、日頃「こころの耳」をご利用いただいている方々に対して心身の不調や不安・悩み等メンタルヘルスに関するメール相談窓口を開設しております。
 これまで通り、東日本大震災による被災地域の労働者やそのご家族、並びに支援活動に関係する方々からのご相談も引き続きお受けいたします。

【こころの耳メール相談利用における注意事項】
 このメール相談窓口では、病名の診断や治療方法の提示、現在受けている医療の是非の判断など、医療行為にあたる内容、
 並びに法律、税務等専門的知識を有する相談には、対応できかねますので、ご了承ください。
ここの、「メールフォームへ」というボタンから、メールを送ることができます。

☆HOME 全国のいのちの電話
全国のいのちの電話のご案内がのっています。
いのちの電話は、たくさんの方から電話がかかるので、つながりにくくなる場合があります。何度かダイヤルして下さるようお願い致します。

☆他にも、相談できるサイトや精神科医のオンライン相談など、Webにたくさん支援サイトがのっています。就職している人のための相談窓口が多かったですが、ほかにもたくさんありますので、検索してみてください。
 「メールで相談なんて…」とお思いになるかもしれませんが、メールで自分の状況を文章にしてあらわすことによって、自己分析ができたり、症状が軽くなったりするなど、実際に回復に有効である事例があるそうです。

◆相談はソーシャルワーカーが担当します

 MSW(メディカル・ソーシャルワーカー)やPSW(サイカイアトリック・ソーシャルワーカー)とも呼ばれます。
 ソーシャルワーカーは、病院にいる専門スタッフで、「入院中の人、外来にかかっている人」「これから病院にかかろうとしている人」が安心して病院で治療できるように、サポートしてくれる人たちです。
 「うつ病」にかかわるソーシャルワーカーは、精神病床や精神科の外来を持つ総合病院。精神科単科病院、精神科クリニックの「医療相談室」「福祉相談室」といった所に配置されています。「ケースワーカー」と呼ばれることもあります。
 ソーシャルワーカーは、患者や家族の様々な相談を受けてくれます。
「夫が鬱的状態になり会社を休んでいます。受診させたらいいか悩んでいます」
「今、働いていませんが、つらいので通院したいのです。いくらぐらいかかるのでしょうか」
「今、とてもつらいのです。お話を聞いてもらえますか。または、お話を聞いてもらえる所をご紹介してもらえませんか」など、相談にのってくれると思います。
 
◆家族も一緒に受診し、治療に参加しましょう
 精神科や診療内科も、診療や検査の手順は内科などのほかの科と基本的には同じです。
●表情やしぐさから総合的に判断します
 精神科の診察で主に行うのは「患者の話を聞くこと」です。
 精神疾患の診断のためには、
・患者の気分の状態
・体の状態
・考え
 などについて、患者が話すことを聞き、精神科医が、
・患者の表情やしぐさ
・からだの診察所見
 などをもとに総合的に判断します。

 うまく伝えようとしなくていいのです。できるだけ率直に、ありのままの自分の状態を医師に話します。
 初めての受診は、家族も伴って、症状や状態について医師に伝えます。
 医師に面通しをしておけば、本人がつらくて薬をもらいに行けないときに、家族が受け取ることもできますし、毎回一緒に行かなくとも、時々一緒に行けば、治療の改善の様子や、自宅でどのように支援し、ケアしていけばよいかというアドバイスも聞くことができます。医師の専門知識と、家族の的確な支援・ケアによって、回復を早めることができます。
 特に、初回の診察では、現在の状況だけでなく、今までの状態の経緯について、ほかの持病や、生まれ育ち、経歴、職歴など、さまざまな質問をされます。
 患者自身のことを総合的に知るために、必要な情報だからです。医師には「守秘義務」がありますから、プライバシーは固く守られます。ありのままを話していいのです。
 また、診療中に不安感が高鳴ってきた場合は、その都度医師に話してください。心配だ、わからないと心のまま、話していいのです。

★ 初診の時によく聞かれること ★
(学歴・職歴がわかる「履歴書」があったら持って行ったほうがいいかもしれません)
 保険証と、かかりつけの内科医から精神科へかかる場合は、「紹介状」を持参しましょう。
 以下のことについて、簡単でいいのでメモを取っておくことをおすすめします。
 家族の方は特に、「うつ病かもしれないな」と思った時点で、今までの経緯や、客観的に変わってきた変化について、ノートに記録を取っておいたほうがいいかもしれません。
 ご自分でも、ノートに箇条書きにすることによって、自分の状態を客観的に見ることができ、冷静に自分の状況を把握することができるからです。
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●患者自身が聞かれること
□現在の気分の状態、体の状態
□いつごろから、どのような状態の変化があらわれてきたか(メモにまとめておく)
□困っていることはなにか
□(もしわかれば)きっかけは何だったか
□仕事や学校、家庭生活の状況はどうか
□出身地や生育地
□学歴、学校での成績
□職歴
□家族構成と血縁者がかかったことのある病気について
□家族との関係
□今までにかかったことのある病気について
□今までに精神的不調を感じたことがあるか
□精神的不調があった時に、治療した場合は、その経緯について
□ほかに治療中の病気があるかどうか
□現在飲んでいる薬の名前
□もともとの自分の性格(入社時の性格・学生時代の性格・変化が現れる前の性格)
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●家族が聞かれること
□家族から見て、患者のどのような所が、「いつもと違う」と感じるのか
(できるだけ具体的に、時間ごとに変化を箇条書きにしておくとよい)
□患者の変化にいつごろ気づいたか
□患者を取り巻く状況について
(会社・家庭・その他交友関係、最近きっかけになったのではないかという出来事、
喪失体験・移動・昇格降格・他)
□過去に同じようなことがあったか
(あった場合、その時の対応、「うつ」状態の期間、治療にかかった場合、その時の対応、
処方されたくすり、飲んでいた期間など)
□過去の大きな病気や手術の有無、時期等の病歴
□家族との関係
□家族が今困っていること
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●家族も一緒に受診する
 患者本人だけでなく、家族から得られる情報もたくさんあります。
 子供や高齢者の場合には、本人の話だけでは十分に症状が把握できないこともあります。
 家族から見た患者の状況の変化や、受診までの経緯、家族との関係について、家族からもありのままを、医師に話しましょう。
 「家族が不安に感じていること」 
 「これから、患者とどのように接したらよいか」
 ということについて、積極的に相談してください。
 なぜなら、患者の回復の一番の助けになるのは、ほかでもない、家族の毎日のさりげない会話であり、思いやりなのですから。
 家族が医師の的確な指示に基づいて対応し、療養しやすい環境を作ることができると、患者も安心して治療に専念できるからです。
 初めて通院するときは、家族が一緒にいてくれるだけで、大きな支えになります。

 「本人に聞くのが基本」
 可能であれば、まず、患者が一人で診察に入り、医師の診察を受けましょう。
 場合によっては一人のほうが、家族には聞かれたくない不安を医師に話すことができる場合もあるからです。
 家族が最初から診察に同席するか、本人が診察を受けた後で同席するかは、医師と相談するようにしてください。
 家族だけ(本人がいない場で)相談したいことがある場合は、そのように申し出てください。

●だまして連れて行かないで
 うつ病患者の中には、病院での治療を拒む人もいます。
 だからと言って、病気だと決めつけたり、受診をせかしたり、だまして病院へ連れて行く、本人に黙って、勝手に企業の産業医に相談するなどはしないようにしましょう。
 本人にとって大きなショックとなります。(企業の産業医に相談する場合は、本人と話し合って了解を得てからのほうがいいです)
 「どことなく体の調子が悪いようだから、まず、体のどこかに悪いところがないか病院で見てもらいましょう」と、一般病棟の内科などの受診から始めましょう。
 「体の異常がないようだから、もしかしてこころのほうが疲れているかもしれないよ。ためにしに受診してみましょう」と、精神科医の受診を勧めましょう。
 どうしても行きたがらない場合は、家族が精神科などの専門医を訪ねて相談し、「先生から聞いた話だけどね…」と、治る病気であることを伝え、病院の様子や、先生の様子を伝えて不安感を和らげるという方法もあります。

●外来医療費の負担を軽減する制度
 通院医療費公費負担制度(精神保健福祉法第32条)が2006年4月1日から「自立支援医療制度」という新しい制度に代わりました。
 精神科の疾患に関して、かかった医療費の90%を医療保険と公費で負担し、残り10パーセントを原則自己負担とする制度です。
 年齢制限がなく、申請した月からの対象となります。さかのぼっては適応されません。
 有効期間は1年です。
 うつ病などの短期の治療や一般の内科で治療中でも申請可能です。
 利用するためには、特定の診断書を医師に書いてもらい、市区町村障害福祉課、地域によっては「保健センター」の窓口に提出します。
 本人の申請がないと適用されませんので、詳しいことは、市区町村の「保健センター」のほうへ問い合わせてみてください。

 「うつ病」の治療となると、3か月休職して完全に回復させるという場合もあるようです。
 その間の収入がない場合は、上手に上の制度を利用してみましょう。しっかり本格的に治療しないと、3か月の休職、復職、また休職…。と繰り返す場合もあります。
 じっくり本気で取り組んで、短期回復が得られるように環境を整える必要があります。
 まずは、相談してみましょう。

★ 参考図書:「あなたの家族が病気になったときに読む本 うつ病」講談社