部下の休職・職場復帰のための9つのポイント

☆ ☆ 部下の休職・職場復帰のための9つのポイント ☆ ☆

 「メンタル不全からの職場復帰の際に、どう接したらいいでしょうか?」
 近年、メンタル不全による休業者が激増し、大変な状況になっています。
 受診率が向上し、多くの人が治療を受けられるようになったのは良いことですが、一方、治療後に社会に復帰する、出口のほうがうまくいっていないという現状があります。
 厚生労働省の支援プログラムを縦糸とし、職場で上司や産業医が具体的に行う安全配慮を横糸としますと、それらを組み合わせ、効果的な展開をすることが必要です。
 
 職場復帰は、本人・医師・人事部などがそれぞれやるべき重要な役割を持っています。
 ここでは、管理者が、部下の休職・職場復帰に関して気をつけるべき9つのポイントについてご紹介します。

★ 部下の休職・職場復帰のための支援・9つのポイント

① 再発・再燃の防止
 うつ病が一度回復しても、「一年間以内に再発・再燃してしまう確立は4割から5割」もあります。回復した後に、また「うつ病」になってしまい、以前の症状がぶり返し、また休職することになってしまうことがあります。特に再燃の危険が高まるのが、「復職直後」の時期です。本人も回りの期待にこたえようと、一度回復したのにまた無理をしてしまい、メンタル不全に陥ってしまうのです。
 また、再発を繰り返すほど、回復率が低下していきます。再発・再燃を起こさせないという気持ちで、復職プログラムを細部まで立て、専門医と連携するなど、十分なサポート体制が必要です。
 さらに、医療系・行政系「復職支援プログラム」の外部資源を活用することも考慮します。復職に対して実績あるところに依頼することで、より専門的な支援を受けられるようになります。うつ病に精通した、うつ病の改善や予防に関しても名医などの存在や、より医学的な見地から職場復帰のプログラムを立てています。

② 安全配慮
 うつ病で、「自殺・自傷の危険が最も高まる時期」が、回復期・復職前後です。
 最も症状が深刻な時期に多いのではないかと思いますが、その時は、「死にたいと思っても何もできない」という状態です。回復期や復職前後に高まるのは、回復期には躁状態とうつ状態の波が激しくなることと、ある程度回復することで、「死にたいと思ったときに実行できてしまう」という点にあります。
 自傷・自殺の事故を起こさせないように、安全配慮をすることも必要になります。
 「心の問題により休職した労働者の職場復帰支援の手引き」2009年改訂版が出ています。
 ガイドラインにしたがって、注意して進める必要があります。

 復職プログラムについて、厚生労働省のガイドラインにしたがって、主治医・産業医・管理者が連携し、復職者にあった「スムーズに復職できるようにするための支援」について、さまざまな観点から準備していく必要があります。
 はじめは、試し出社の利用、勤務時間を短時間にすることでストレス軽減を図る。はじめは環境になれるところからはじめ、簡単な事務仕事をさせる。回復を待って徐々に以前の仕事内容までレベルを上げていくなどの「復職プログラム」を具体的に練っておきます。

※ 詳細は、当サイト「リワークプログラム(企業)」参照ください

③ 心のハンディキャップへの配慮
 復職する部下の気持ちには、「病気」「機能」「人目を気にする」などの3つのハンディがあります。例えば、足を骨折して車椅子で復帰する部下には、ハンディが一目で分かり、体力的な仕事はさせません。
 ところが、メンタル不全は目に見えない障害です。
 休職前までできていた企画書作成の仕事を、復帰後にいきなり作成させようとしてもできない場合があります。
 そして、復帰した部下も「以前のような仕事をやり遂げたいのにできない」ことについて悩んでしまいます。
 職場は決してリハビリ施設ではありませんですが、「以前のようにはいきなりできない」ということを考慮して、勤務時間を短縮したり、はじめは簡単な事務仕事から回復を待って徐々に複雑なものにしていくなどの「復職プログラム」を段階的にこなしていくことで、徐々に自信を持ち、回復を助けることができます。
 目に見えないハンディがあるということを理解し、「心のバリアフリー」を準備しましょう。

④ 復職のコスト
 年収600万円の社員が休職すると、代替要因人件費などを含めるとおよそ倍程度の損失があると考えられます。経営コストの面から考えても、スムーズな職場復帰支援に努力することは、本人や家族だけでなく、会社のメリットにもなります。

⑤ アセスメント
 現在の診察では、内因性の重症のうつ病も、比較的軽いストレス要因によるうつも、性格要因の強いうつ病も、同じ「うつ病」と診断書にかかれます
 診断書に「うつ病」とあっても、症状の重い軽い、発症した要因、現在の回復レベル、職場での能力などについては、個人差があります。
 うつ病のタイプ別によっても、対応が大きく異なります。症状の重い軽いによっても、効果がある方法も変わってきます。
 そのため、専門医に、「職場で必要な具体的な能力、職場環境等」についての情報を与え、「業務可能まで回復しているかどうか」について診断書を書いてもらうことが必要です。
 何も事前情報がない場合は、「日常生活が可能な程度に回復した」というレベルでの「復職可能」という診断が出てしまいますので、復職可能なレベルまでは達していず、再発してしまったということになりかねません。
 専門医・産業医・管理者が、「現在の休職者の回復レベル」や、「具体的にどのような支援が望ましいか」などについて、互いに情報提供をし、「その人の症状に合った効果的な支援プログラム」を組むことが大変重要になってきます。
 「うつ症状」の比較的軽い人に、「ただ出勤して読書だけする時間」が非常に長かったとしましょう。「会社に必要な人間でなくなってしまったのかな」「私にはもう仕事は任せられないということか…」など、良かれと思ってやったことが逆効果になることもあります。
 逆に、非常に状態が重く、1年近くかけて治療し、やっと復帰した人に対して、「やりがいがある仕事を任せよう」と「依然できていた仕事をいきなり任せた」とします。以前のような仕事ができなくなった自分に対する嫌悪感が強まり、悪化してしまった。など、症状によって効果的なアプローチが異なってきます。
 専門医としっかり連携を取ることや、外部の「リワークプログラム」も併用するなど、「専門家の意見」をきちんと組み込んだ「復職支援プログラム」にする必要があります。

⑥ 連携
 管理者は、一人で抱え込まずに、必ずコンプライアンスを遵守し、本人・人事部・専門家、及び産業スタッフ(産業医)・家族と協力しながら、よく話し合い、職場復帰を勧めましょう。

⑦ 休職期間の意味
 1つは、医学的には病気の治療と健康の回復のための準備期間。
 2つ目は、「解雇権の履行が猶予される期間」。

 休職期間の就業規則をよく確認します。特に①期間、②同一疾病で数回にわたり休職復職を繰り返した場合の休職期間の合算について確認しておきます。

⑧ 休業期間中、労働者を支える家族のサポート
 休業が始まる前に、労働者に対して、必要な事務手続きと職場復帰支援の手順を説明します。さらに、休業中に安心して治療に専念できるよう、「情報提供などの支援」を行います。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
休業中の労働者・家族への情報提供の内容例
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1. 傷病手当金などの経済的な保証
2. 不安悩みの相談先の紹介
3. 公的または民間の職場付記支援サービス
4. 休業の最長(保障)期間   など
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 休業中は、家族によるサポートが重要になってきます。うつ病は3ヶ月から1年ほどと、長期にわたる休養が必要な場合があります。
 その間に労働者の回復を支えるのが家族です。本人の「心の健康問題」だけでなく、「経済的不安」についても家族に大きな負担がかかります。「休職にいたった原因について」家族が職場に対する不信感も持っていることもあります。「自殺衝動があるなどの重篤な場合」など、妻も働いていた場合には、夫の療養のために休職・退職をせねばならない事態にもなります。
 そのため、休職に入る前と、休職中、復職の前後にも、心の健康問題や職場復帰に関する情報提供、経済的な保障制度等の情報提供、家族からの相談対応など、事業場として可能な「誠意ある支援」を行うことが大変望ましいです。
 また、職場の復帰の最終的な決定において、本人の同意を得た上で家族から情報を得ることも効果的な場合もあります。家族も復職に対して強い希望と不安を抱えていますから、復職に対する会社のサポート体制・保障制度について、家族に伝え、安心感を与えることも大切です。

⑨ 行政などのリワークの利用の奨励
 管理職としては、休業中の部下に「リワークをしてから復帰したほうがいいよ」と勧めるとよいです。
 最近は、各都道府県でインフラが整い、リワークを受けやすい環境が整いつつあります。
 また、家庭内の健康配慮として、リワーク組織と情報を共有して「うつ病」の再発防止に向けて以下のサポートがあることが望ましいです。

□ 医師に受診させ、服薬の管理をする
□ 遠方で一人暮らしのときは、家族がきちんと専門医を受診しているかどうか、薬を服用しているかどうかを電話で確認する
□ 休養を第一にし、「早く働いてほしい」など、せかしたり責めたりすることは逆効果になる。ゆっくり休める環境を整え、見守ることが大切
□ 負担の軽減(なるべく家事負担を減らす)
□ 就寝管理(夜遅くまでパソコン作業やゲームなどに夢中にならないよう、規則正しい就寝を依頼する。うつ病は「不眠症」とも深く関わっていることもあります。生活リズムを整えていくことで、回復が早まります。ですが、症状の思い時期は、「ゆったり休む」ことに専念することが大切です。回復と同時に生活リズムも整ってきます。不眠などの症状が重い場合は「不眠治療も平行」して服薬治療などを行います。
□ 「退職」など、療養中は大きな決断をさせないことが大切です。
□ 家族だけで悩まず、専門家と連携するよう進めます

  管理者・同僚に対し、「心の健康問題」や「自殺の兆候・サイン」などに関する教育・研修を十分にすること。「ラインケア」「セルフケア」を推進するための情報提供・教育研修を行うことが必要です。
 また、自社の有事の際の「病床手当てなどの経済的保障」「休業復職の可能期間」「復職支援のあらまし」などについて事前に周知徹底を図っておくことが必要です。